認知症を患うと、相続対策を進める上で、様々な弊害を受けることになります。
民法上、認知症を患った人は「意思能力のない人」として扱われます。
そして、意思能力がない人の契約行為などは「無効」もしくは「取り消せる」ことになっています。
こうした意思能力がない、または低下していることは医師の診察によって明らかになりますが、もし
医師から「認知症である」と診断を受けると法律行為が無効とされるのです。
具体的には次のような行為ができなくなりますが、相続対策にとってはどれも重要な内容であり、事
実上、相続対策ができないと言えます。
①不動産の売却・賃貸契約 ②預金口座の解約・引出し ③生命保険加入 ④子供・孫など
への生前贈与 ⑤遺言書の作成 ⑥遺産分割協議への参加など無効として扱われます。
もちろん、認知症になる前に相続対策を終えてしまえば問題ありません。しかし、実際は被相続人の
多くが「自分は認知症とは無縁である」と考えています。その結果、いざ相続対策をしようと
する時には手遅れになっているのが現状です。
認知症の親には資産があり、このままだと高額な相続税が発生することが目に見えている、何とか対
策する方法はないのか?と悩んでおられる相続人は多いでしょう。
大変お気の毒ではありますが、認知症になってしまったら、もう手遅れなのです。
なぜなら、相続財産はすべて本人の所有財産なのですから、たとえ家族であっても本人の承諾なし
に手をつけることは許されないのです。認知症になると、その本人が意思を表現できないのですから
もはやどうしようもありません。
親が認知症になっていることを隠して、公正証書遺言を作らせるといったこともご遠慮下さい。
もし、トラブルになって裁判になれば遺言の無効判決が出るでしょう。たとえ公正証書遺言であって
も、本人の意思で作成したことが明らかでなければ無効となります。
唯一できることは、現在の財産を把握し、相続人となるであろう人の間で共有して心構えをしておく
くらいでしょう。また、発生する相続税の金額を把握し、それに備えて現金をコツコツとためて用意
しておくことです。
親は大切な子供・孫のために、相続対策を先の話にせず、今だからできることをしていかなければな
らないのです。
では、何から手をつければいいのか?